おしまいおしまい~(笑)

池と旅館に泊まりに行った時に記念で描いた漫画でした☆
本当は色々と設定があったんだけど、続くかどうかわからないのでここに描いて置きましょう。

前田旅館は代々続く老舗です。
しかし何かと暗い噂が後を絶ちません。その全てが、「あそこには幽霊が大量に住み着いている」というものでした。
竹中半兵衛はとある除霊事務所で働いている有能な退魔師。
そのとある事務所に、前田旅館から依頼が来たのが夏の終わり頃です。
事務所所長である豊臣秀吉が出張中につき不在だったため、臨時所長を任されていた半兵衛は非情に厄介な仕事になるだろうと予想しながらも、秀吉の役に立ちたい一心と天秤にかければ断れる筈がなく。
電話で状況を報告しながら、心配する秀吉に訳もないさと笑い、単身前田旅館へと乗り込んで行きます。
着くや瞬く間に披露される怪奇現象、札札札札札札札の嵐。
まつから客の被害報告をじっくり聞かされ、もはや稲川○○の公演にでも行ったかのようなボリュームに胸焼けがしてきた頃、早速事件は起こりました。
今にも死にそうな爺さんが、孫がいなくなったというのです。
よくある神隠しだと女将。その肩に乗った片手を見て、ひょえええ気絶する爺。
よくあるって何だと眩暈を起こしかけながらも、半兵衛はまつを問い詰めます。
すると彼女はあっさり、まず旅館に泊まった家族の中で一番最年少の者がいなくなるのは日常茶飯事だと言うのです。
「かくいう犬千代様も旅館で生まれ育った訳なのですが、昼間にふっと記憶をなくして翌日の昼間に見つかる事が何度もあったそうです。まつが嫁入りした時は、甥子の慶次が何度も何度もいなくなっていたので、神隠しは普通の事にございました。」
そりゃあ出たくもなる。半兵衛は顔も知らないながら慶次君に深く同情しました。
「やっぱり君の心配を聞いておくべきだったかな秀吉・・・」
「ですが一日もするとひょいと現われるのですよ、最近は怪奇現象目当てでいらっしゃるお客さんばかりでしたので、新しくいらした方だったのかもしれませぬ。悪いことをしてしまいました・・・」
爺さんを手厚く介護しながら、まつはよく説明しておきますと半兵衛を利家の部屋へと通します。
そこには信じられない光景が広がっていました。


・・・部屋が、真っ暗なのだ。いや、違う、真っ黒に染め上げられているんだ。
「これは、な、」
驚く半兵衛の首にまつの指がするりと絡みつく。
躊躇無く動脈を締め上げられ、ぐるんと景色が反転しそのまま闇に落ちてゆく。
遠くから、まつの愉快に笑う声が響いていた・・・。

「しっかりなさいませ!」
笑い声の中に太く響いたまつの声で、唐突に意識が浮上する。
思い出したように呼吸が戻り、激しい咳が喉から溢れた。喉の奥が切れたみたいだった、出血する。
まだ景色は不安定に揺らいでいて、なんて最悪な目覚めなんだろうと色々後悔するがそんな暇はないようだった。
「いま・・・僕に何が起こったか、わかる、かい?」
「廊下の曲がり角で視界を『捻られた』のです、金縛りにあって気がつきましたら竹中殿が明後日の方向に向かって客間をお開きになられましたから、急ぎ金縛りを解いてお助けいたしました。」
なんてことだ。今まで数多くの霊を払って来て、実力にはそこそこの自信があったというのに仕掛けれたことにすら気がつけなかったなんて。
「申し訳ありませぬ。恐らく、竹中殿の出現に危機を成した者達が騒ぎ出している様子。・・・これだけの強い負の力を感じたことは御座いません。殺せ殺せと、突き刺さるよう。」
これは、本当にまずい。
「とにかくお逃げ下さい竹中殿。思えばまつが浅はかでした、前田家は旅館を営む前は強力な陰陽師を営んでいたと聞きます。我が家もその系統で、だからこそ嫁に来れたのです。その前田家が代々ずっと鎮められなかった者たち。無傷で払えるような相手である筈がなかった、それを慶次が家に戻れるようにと思ったばかりに・・・!」
なんて奴だ慶次君、全く姿も現さないくせにしっかり元凶になっている!
外へ続く廊下を走りながら、横から上から下から奇襲にかかる魍魎を必死にかわす。
有能だなんだと言われながら、このザマはとても秀吉には見せられないと思った。
いっそ真っ向から立ち向かって死んだ方が無様じゃないのかもしれないが、そんなことを秀吉が望むはずがないこともわかっていたので、今は死なないように逃げるしかない。
「竹中殿、お止まりなさい!」
思いっきり首元を捕まれ引っ張られ、また気絶しそうになる。
それを堪えて後ろに倒れこむと、丁度自分がいた場所に無数の針が突き刺さっていることに気がついた。一気に背筋を冷たいものが駆け上がる。
「な、何故だ、僕の力が全く反応しないよ。」
「この旅館、もしかいたしますと前田家、あるいは魍魎の力しか効かない術がかけてあるのやもしれませぬ。竹中殿に依頼を申し上げた時には確かに強い力を感じましたが、こちらにいらしてからは消えてしまったかのように弱くなっておりました。大量の力の影響で感じにくくなっているのかと思っておりましたが」
「なんて、ことだ」
そんなの本末転倒じゃないか、今さら言われたって困る。
ああ・・・秀吉、もしかしたら僕はメンツどうのと言う前に
「あれは、先ほどの北条様のお孫さん・・・」
普通に死んじゃうかもしれない。
北条のお孫さんと呼ばれた青年は、何故だか大量の長く殺傷力のありそうな針をいっぱいに構えて僕らを静かに見ていた。とても正気のある気配はしない。

客はどうなったのだろう?そんな考えが頭をよぎる。
もしかして、もしかしたらだが、そこまで強力な魍魎ならば、今ここにいる全ての客の正気を奪い、僕らを殺させに来ることくらい容易いのではないだろうか?

そういえば、まつ女将のいう旦那犬千代とはどこに行ってしまったのか。
彼も陰陽師の血があるならば、この状況に助けに来てくれても良さそうなのに。

「・・・犬千代様は、先日突然お倒れになられ、眠ったままの状態が続いているのです。今は身を案じて近くの病院に」
「は!?だけど」
「この旅館で主を不在と明言してしまえば、一本柱を叩き折るのと同じ事。たちまち魍魎に飲まれてしまいます。犬千代様のお部屋には身代わりの移し身を置いて御座います。本日は、魍魎を払っていただく事と共に犬千代様が何故お倒れになられたのか、お目覚めになる方法はあるかご相談いたそうと思っておりました。犬千代様の部屋だけは強力な結界を張る事が可能で魍魎に声は届きませぬ故。」
「その部屋に逃げればよかったんじゃないのか」
「なりませぬ、強力といえ魍魎の目を反らす力しかないのです。逃げ込めば場所を教えてしまうことになります、そうすれば旅館は一溜まりもありませぬよ。」
「じゃあ、どうしろというんだい」

目前には動けば殺すと威圧する青年。
次第に集まってくる魍魎の気配。

「四面楚歌だ」
「まさに」



前略。
秀吉、もし遺言が届くなら、僕の代わりに前田慶次という男を殴っておいてくれ。




「ひっくし!」
「なんだい慶ちゃん、噂でもされてんと違うかい?」
「んー、あ」
「どしたよ?」
「・・・お守りの手綱が切れてる」
「そりゃ不吉だねぇ、アッハッハッハ!」







うおお、なんと・・・考えてないところまでスラスラスラスラ出てきてこんなんなってしまいました(笑)

以上、過去の文章をそのまま転載(笑)